東京・渋谷という大都会にありながら、力強く育った木々の杜(もり)が特長の明治神宮は今年11月1日に、鎮座百年祭を迎えるそうです。(お近くの方は10月30日から11月1日までの3日間、夜間特別参拝もあるようです!)。 この広大な杜は、創建の際に全国から献木された約10万本を植栽して造成された人工林としても知られますが、何もない更地から、ここまでの生態系を生み出す植物のパワーには改めて圧倒されますね。 今日は、生き方に気づきをくれる植物の鑑賞法について、おしゃべりしたいと思います。
地球上の生物の約99%は植物。 人間はほんの片隅に居候中?!
切り花を買って来たり、観葉植物にお水をあげたり。日々の暮らしの中では、植物を世話する側にまわることが多いのでつい勘違いしがちですが、実は地球上の生物の約99%は植物が占めているといわれています。次に続くのはバクテリア、動物、であり、人間が占める割合は本当にわずか。この数字、ご存じだったでしょうか?
そういう視点で考えて見れば、地球は植物の住む場所であり、そこに私たち人間が、「ほんの片隅でご一緒させていただいてる」ような感じかもしれません。私たちの影響力が、いい意味でも悪い意味でも大きいせいか、「人間が地球を動かしている!」なんて思いがちですね。もちろん、それはとんでもない勘違い。調べてみれば、植物についても私たちは知らないことがたくさんあります。
私たちにはキャッチできないけれど 植物も会話をしています。
たとえばその1つが、植物も「コミュニケーションをとっている」ということ。 「植物に話しかけるとよく育つ」という話は聞いたことがある人も多いかもしれません。この説は科学的に説明することはできませんが、植物が周囲の環境の匂いとして感じることで、植物同士や昆虫、動物などとコミュニケーションをすることはすでに解明されています。
京都大学と山口大学の共同研究によれば、虫に食べられた植物が特別な香り物質を発生させてその虫の天敵をボディガードとして呼び寄せたり、周りの植物たちに「近くで仲間が虫に食べられている!」と言う危険信号を伝えることで、周辺植物が防衛策をとることもあるとか。すごい!
私たちは日々言葉を介してコミュニケーションしていますが、たとえば日本語しかわからない人には、英語やスペイン語で話される内容は理解できません。 同じように鳥や動物の言葉も分かりません(しぐさや表情などから想像して、そこにコミュニケーションが成り立っている場合もありますが)。さらに何も聞こえず、表情や姿勢なども変えない植物との対話はより一層難しい、いや、できないと思いがちです。
分かることがすべてじゃないから、 いろいろ不思議で面白い。
が、それは私たちが分からないだけで、植物同士や、植物と虫、動物などはコミュニケーションをとっていたのです。結局は、私たちが分かること、認識できることがすべてじゃない、ということ。分からないけれど、そこには何かが確実にある。そう考えると見える景色に深みが生まれるような不思議な気持ちになってきます。
分からないけれど、ベランダの観葉植物は、植物同士で、とか、寄ってくる昆虫たちと会話を楽しんでいるかも。そんな風に思って改めて眺めていたら、殺風景にも思えた小さなベランダの風景が、よりイキイキとしてくるような気がして、ウキウキします。こんな想いで身近な植物を鑑賞してみるだけで、勇気が湧いて来たり、新しいヒントになったりするので、とってもおすすめです。
先日も植物の知性について書かれた本を読んでいたら「高速で動く宇宙人が地球に住む私たちをみたら、私たちは“動かない”生物として認識されるかもしれない。私たちが“植物は動かない”と思いこんでいるのはこのことと同じかもしれない」とあり、ハッとしました。すべてを、自分の視点から感じることだけで分かることが真実じゃなかった!と反省するのです。
ちょっと難しいお話となりましたが、最後に、とっても気軽に植物を楽しめる、とっておきの方法をお伝えさせてください。主人公は旬のさつまいもです!
美味しく食べた後、切り落とした端っこを水耕栽培の要領で水に浸けてみてください。数日で小さな芽が出てきて、根がどんどん伸び、すくすくと茎が伸び葉が拡がり、2-3日ごとに明らかに変わっていく様子を実感できるはず。ものすごい勢いで育ちます。ちょっと大きめに切り落とすせば、たくさん芽が出てきてかっこいいインテリアのようにも育って驚くはず!
ぐんぐん伸びるさつまいもを眺めながら、植物から、いろいろな思考を深めていってみませんか? 短いとはいえ心地よい秋の夜長に誘われて、哲学的なおしゃべりになりました。次回もぜひ、お楽しみに。
参考) 植物間の香りを介したシグナリングの仕組みの解明について http://www.yamaguchi-u.ac.jp/library/user_data/upload/Image/topics/2014/14042901.pdf
『植物は<知性>をもっている 20の感覚で思考する生命システム』(ステファノ・マンクーゾ/アレッサンドラ・ヴィオラ著、久保耕司訳、NHK出版)
『植物はなぜ動かないのか 弱くて強い植物のはなし』(稲垣栄洋著、筑摩書房)