塚本こなみさんが、一番好きな 冬の植物のこと。

2019.12.19 更新

    寒さが増してくるに連れ、植物は紅葉し、枯れ葉を見かけることも多くなってきました。なんとなく寂しいような気分になってきますが、樹木医の塚本こなみさんとおしゃべりしたら、冬の植物を見つめる眼差しが変わりそうです。
    「一番好きなのは冬かも」という塚本さんに春夏秋冬の植物のこと、伺いました。「はままつフラワーパーク」での楽しいおしゃべり、第2弾です。

    塚本こなみさん(以降敬称略):冬、植物は葉を落として静かに眠っている期間。一見、地味に見えるかもしれませんが、わたしは一番好きな時かもしれません。植物の成長から考えると、冬のお手入れが一番大切なんです。この先の美しさをどう演出するかというイメージを持って手入れをしていると、凛とした寒空の下で耐えている樹木たちはとても愛おしいし、雪や霜が降りていれば、なおさら美しい、冬は樹木それぞれのキャラクターがそのまま見えてくる季節かもしれません。

    草花木果:なるほど。肌も冬は特に乾燥などが気になるシーズンですが、塚本さんが植物を見つめる視線のように「その先の美しさ」をイメージしながらお手入れすると、いいのかもしれないですね。

    塚本:はい。もちろん、春の芽吹き時も美しいです。冬の間に生命力を蓄えた植物たちの命がふわっと動き出す。私たちにとって、花は1年間樹木をお手入れしてきた努力の結果です。まるで成人式を迎えた子どもを舞台の袖からひそかに見つめるような感じで、花を見つめます。 夏は、水が足りないのでは、日差しが強すぎるのでは、と心配な時期で秋は1年お疲れ様でした、とほっと一息つくタイミングでしょうか。 やっぱり、とにかく冬が好きですね。フラワーパークも冬は寒くてお客さまが減って誰もいらっしゃらないということもありますが「なんでこんなに美しいのに見ていただけないのかしら」と思うほど、美しいです。大好きです。

    草花木果:冬の植物を見ている視点が違うということなんでしょうか? 塚本さんが植物から学んだ美しさとは、どういうものでしょうか?

    塚本:前回、植物は全力ですべてを受け入れて必死に生きていて、それが美しいという話をしましたが、別の言葉を使えば「逃げない」ということだと思います。毎日、それぞれの営みを懸命に励み続けます。たぶん人も、死ぬまで学びたい、成長したいと思っているかどうかで、美しさは変わるように思います。

    草花木果:以前、別のご講演で五葉松のお話を伺いました。枯らしてしまった樹木のお話でしたが。

    塚本:そのエピソードはめったにお話しないんです。私にとっての失敗ですから…。でも、成功事例には何の学びもないと思っていて、枯らしてしまった樹木からしっかり学ぶべき。失敗したら学びにしないと申し訳ないんです。そこからどう自分自身を形成していくのか。次に活かすのか。失敗には大いなる学びがあるし、もう二度と同じ失敗をしないことで、初めて許されるのではないかと。 我が人生恥かきなり、と思います。

    草花木果:なるほど、まさに「逃げない」ことですね。

    塚本:最後に、皆さんと「逃げない」ことを考えたいことがあるんです。それは、今生きている大人として次の世代に今の環境をそのまま渡していいのか、ということ。真剣に考えるべき時期が来ていると思います。「地球温暖化」という言葉をよく耳にしますが、私は「高温化」だと思っていて。「温暖化」では生ぬるい! 高温障害が各地で出ていて、花が咲かなくなっています。

    草花木果:一人一人が自ら実践するという意識をもたないとダメですね。ありがとうございます。わたしたちも、もっともっと自然の一員である意識を高めていきたいと思います。

    塚本こなみ
    今回おしゃべりした方
    塚本こなみさん

    1949年静岡県生まれ。22歳で造園業を営むご主人と結婚。樹木に関わるようになり一級造園施工管理技士を取得。92年に女性初の樹木医資格を取得。99年あしかがフラワーパーク園長就任。年間入園者数100万人という大人気の植物園に再生させる。2013年からはままつフラワーパークを運営する公益財団法人浜松市花みどり振興財団理事長に就任。
    はままつフラワーパークhttp://www.e-flowerpark.com/