暮らしに、自然の息遣いを。
前田有紀さんに聞きました。

2018.11.27 更新

    フラワーアーティストの前田有紀さんをどこかでお見かけしたような・・と感じた方、正解です。
    彼女はテレビ朝日の人気アナウンサーとして10年間のご活躍後、突然のライフシフトを実行。そこには自分の見つけた人生に前向きに挑む、美しさがありました。

    前田有紀さんは、“花とあなたが出会う場所”をコンセプトに“gui –flower and life-”で活動を続けるフラワーアーティスト。まだライフシフトという言葉が今ほど一般的になる前である2013年にテレビ朝日を退社。転職を目指します。その決断の裏になったのは「アナウンサーの仕事は楽しいけれど、本当に一生これがやりたいことなのか?」という自分自身に対しての問いだったそうです。

    好きなことをしている人の目は、キラキラ輝いているんです。

    草花木果:テレビでよくお見かけしていたので、フラワーアーティストになられたことを知って驚きました。何がきっかけだったのでしょうか?

    前田さん(以降、敬称略):いろいろなきっかけがあったのですが、アナウンサーというお仕事柄、企業経営者やプロスポーツ選手、起業された方など世界中の一流の方々にインタビューをさせていただく機会が多く、その皆さんが好きなことをしているということに気がついたのが1つのきっかけかもしれません。好きなことをしていらっしゃるので、お話をしてくださる目がキラキラと輝いている。そんな姿と触れるうちに、私も本当に好きなことを仕事できたら、と思い始めました。 もちろんアナウンサーの仕事も楽しかったのですが、一生やっていきたいか、本当に好きなことなのか、と考えるようになって。何年もかけてゆっくりゆっくりと考えていった先に、自然や植物、お花と関わりたいという自分の気持ちに行きつきました。

    好奇心>不安。背中を押したのは、自分です。

    草花木果:アナウンサー時代にも、お花と縁があったんですか?

    前田:いえいえ。特にアナウンサーの頃は四季を感じるような時間もないまま、地下鉄で仕事場と自宅を行き来する忙しい都会暮らしでした。実は最初は、部屋に1輪のお花を飾ることから始まったんです。そのお花があるだけですごく元気になったり、癒されたり。ゆっくりと変化していく様子を見ていると、忙しさが当たり前になってしまった暮らしが、心地よくほぐれていくような気がしました。ゆっくりと息をして生きているお花から、「大丈夫だよ」と言われているような気持ちにもなって。だんだんと飾る本数が増え、アレンジメントを習い始め、ついにはイギリスに学びに行き、帰国後にお花屋さんで修行させていただいて、今に至るという感じです。

    草花木果:アナウンサーをやめて、それまでまったくご縁の無かった世界に飛び込む時は、反対されませんでしたか? 不安もあったのでは?

    前田:ものすごく反対もされましたし、もちろん不安もありましたが、結局、自分の背中を押したのは自分だったと思います。新しい世界を見たいという好奇心が不安より上回ったんです。 短い期間でしたが、勉強のために滞在したイギリスには、たとえ都会でも庭がなくても、お花や自然を普通に暮らしに取り入れる人々の日々がありました。日本でももともと自然との暮らしが大切にされてきたように、これをいまの日本の都会の暮らしの中でも定着させたいと思ったんです。自分のように一輪のお花に元気づけてもらう経験を誰もが自然にできるような社会にしたいという想いが、今、こうやって活動するすべての原動力ですね。 お花をもっと、毎日の暮らしに取り入れて欲しい。

    草花木果:確かに、考えてみたらなかなか自分用にお花を買うことってないかもしれません。

    前田:私が花屋で勤めてきた経験では、お花はギフトとしての需要がほとんどでした。独自に調査をしたアンケートでは、若い世代は年に2回くらいしかお花を買わないという結果がでたこともあります。自分のためにお花を飾る人はまだまだ少ないんです。でも、自宅にお花を飾ってみたいと思っている方は思っている以上に多いと感じています。私は、都会の慌ただしい暮らしの中でも、花と緑が身近に感じられたら、いまよりももっと豊かに彩りのある毎日を過ごせるのではないかと思っています。 自然やお花の力って、ほんとに計り知れないものです。私のように一輪のお花からでも良いので、「飾ってみたい」と思う気持ちに素直に、ぜひ、できることから始めてみてはいかがでしょうか?

    お花と一緒に暮らすワンポイントアドバイス。

    Q.長持ちさせられないし、枯らせてしまうんです・・。

    前田:毎日茎を切って水替えをするととても日持ちしますよ。 ただ、お花は、生きているからこそ、雑貨のように完璧な状態がずっと続くわけではないんです。枯れていく姿だって美しい。それもお花の魅力の一つです。だから枯れることだって恐れずに、どんどん変化する様子まで味わってみてください。

    Q.忙しくて、日々の水替えなども面倒・・。

    前田:たとえば、そのまま飾るだけで雰囲気が楽しめるドライフラワーなどもおすすめです。特に乾燥しやすい冬はいいですね。すべてのお花がドライフラワーになるわけではないのですが、なるべくドライになるものを選べば、枯れた後もずーっと楽しめます。

    Q.マンション暮らしの子どもにも自然を体験させるには?

    前田:お花屋さんに足を運んだり、公園で遊んだり、ベランダの寄せ植えでも充分! 土でも植物でも「触らない」のではなくて「どんどん触って!」という風に声をかけて、自然に直接に触れる機会を増やしてあげられたらいいですね。

    次回は、前田さんが思う「美しい生き方」をご紹介します。お楽しみに。

    今回おしゃべりした方
    前田 有紀さん

    フラワーアーティスト、“gui –flower and life-”ブランドプロデューサー。
    テレビ局でのアナウンサー勤務を経て、イギリス留学。3年間の花屋勤務を経て独立。1歳11カ月のお子さんを含むご家族で自然豊かな鎌倉で暮らす。2018年11月30日から12月5日まで、東京・表参道ヒルズ同潤会アパート内のギャラリーROCKETにも出展予定。