怒りのマネジメントとは? 西村さんに伺いました。

2019.05.21 更新

    フリーアナウンサーとして、そしてアンガーマネジメントファシリテーターとしても活動する西村さん。改めて、anger=怒りについておしゃべりしてみると、たくさんの気づきがありました。

    新時代を迎えました。令和は、英語では「ビューティフル・ハーモニー」と訳されているようですが、改めて人とのハーモニーを考えてみたいと思い、お会いしたのは西村綾子さん。フリーアナウンサーとして情報番組などでご活躍されていますが、最近では「アンガーマネジメントファシリテーター」としての活動にも注目が集まります。そもそも、アンガーマネジメントとは??

    自分の感情に責任を持つためのテクニックを、知ること。

    草花木果:どんなきっかけで、アンガーマネジメントの世界に入られたのでしょうか?

    西村さん(以降敬称略):リポーターとして11年間担当していた朝の情報番組を卒業することになった時に、たまたまアンガーマネジメントについて知りました。それまでは番組のお仕事で精一杯でしたが、精神的にも肉体的にも多少余裕ができたので、面白そうだなと思って気軽に講習に行ってみたのが最初です。

    実は私、ものすごく怒りっぽかったんです。常に自分の中に何かしらの怒りがあって。正直、怒ってもいい、と思っていました。怒ることで若手が仕事を早くやってくれるなら、それも必要な手段。仕事をスムーズに進めるために怒っているのだから、それで私を嫌いになるならどうぞ嫌いになってください、と考えていたんです。

    草花木果:初対面でも、こんなに朗らかに親しくおしゃべりしてくださる西村さんの姿からは、怒るなんて想像できない!そもそも、アンガーマネジメントは怒らないようにするための勉強なのですか?もともと怒りっぽくない人には必要ないのでしょうか?

    西村:アンガーマネジメントは、「怒りの感情と上手に付き合う」ことを目指していて、怒らなくなることが目的ではないんです。「 怒って後悔するなら怒らない」「怒らなくて後悔するなら怒る」このように線引きできるようになることで、怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らないようになること、を目的としています。

    ですから、どんな人にも必要だと考えます。実際にアメリカでは、アンガーマネジメントはとても一般的です。元々はDVなどのメンタルヘルスプログラムとして始まったようですが、今では子どもも学生も大人も、学んでいます。結婚の際に結ぶ契約書に「結婚前にアンガーマネジメントを受講すること」なんていう項目が記載されるケースもあるんですよ。

    ついカッとなってしまう時、どうしたらいいですか?

    草花木果:具体的には、私たちはどんな風に怒りと向き合えばいいですか?

    西村:まず、喜怒哀楽の中でも、怒りだけに「アンガーマネジメント」というテクニックが存在しているのは、怒りはエネルギーが大きく、コントロールしにくい感情だからです。怒ることで、二度と関係性を元に戻せなくなってしまうこともある。そこで、怒った時に一番やってはいけないことが「反射」です。
    皆さんも、つい怒りに任せて売り言葉に買い言葉を言ってしまったり、反射的に言い返してしまったなどの経験があるのではないでしょうか。反射的に言ったこと、やったことは、後から「しなければよかった」と、後悔することが少なくありません。

    対処法としては、「怒ったら6秒待つ」ということをお伝えしています。怒りのピークは長くて6秒。

    怒りは消えなくても、6秒待てればより理性的になれると考えられています。そして6秒待つ間に、「今の自分の怒りはどのくらいのレベルかな」と、考えてみてください。怒り無しの穏やかな状態を0、人生最大の怒りを10とした時に、今、感じている怒りは何点かな、と点数をつけるのです。6秒待ちやすくなりますし、数値化しようとすることで、目の前の怒りから意識が離れ、冷静になれる効果もあります。

    また、怒るたびに、怒りの内容と点数を記録することをお勧めします。「私はどんな怒りが何点なのか」という怒りの尺度が見えてきますよ。 たとえば、今日は18℃まで上がるから上着いらないかな、というように、何℃がどの程度の暑さ寒さなのか、自分の中に気温に対しての尺度を持っているから、判断や比較ができますよね。それと同じように、自分の怒りの尺度がわかると、これはいつも5のケースだから言い過ぎないように気をつけよう、とか、いつもは2をつける怒りだから、冷静に対処できるはず、などと、怒りを客観視しやすくなるのです。

    草花木果:でも、その方法だと、自分ばかりがいつも対処することになりませんか?仕事の付き合いなどで怒りをぶつけてくるような人がいたら、そうやって「我慢する」しかないのでしょうか?

    怒りとは何かを理解することが、第一歩。

    西村:確かに自分以外の人はコントロールできないですね。でも、こちら側の受け止め方や反応が変わることで相手が変わることもあります。まず考えて欲しいのは、その怒りの原因は自分で変えられることか変えられないことか。その上でどう対処するのか。
    例えば、雨が急に降り出したとして、それは自分ではコントロールできないので、「雨、止めーっ」と怒るわけではなくて、傘をさすなり、雨やどりをすると思います。同じように、そりの合わない上司が人事異動で離れることは、自分でコントロールできない。それなのに異動を願い続けて叶わないと、逆にストレスにつながってしまうこともあります。

    だからまずは、「変えられない現実」であると受け入れます。その上で、たまにはその上司とのコミュニケーションがうまく行く日もあるなら、その理由を考えてみたり、どうしてもダメなら極力直接合わずに仕事が進められる方法を考えてみるなど、変えられないことを受け止めた上で、現実的な選択肢を探すことが大切です。また、「怒る」とは、相手に対して「今後どうして欲しいのか」を伝えるリクエストです。相手をコントロールしたり、打ちのめすことが目的ではない。そう考えたら、どうやって「怒ればいいのか」が少し見えてくるような気がしませんか?

    草花木果:確かに。アンガーマネジメントはとても理論的ですね。怒る人だけでなく、怒れない人も増えている現代にはとても有意義なことだと感じました。西村さんの講座にも、参加してみたいです!

    西村 綾子
    今回おしゃべりした方
    西村 綾子さん

    フリーアナウンサー、アンガーマネジメントファシリテーター。さまざまな価値観を持つ人がそれぞれに活躍する多様化された社会でこそアンガーマネジメントが必要になる、と精力的に活動中。 アンガーマネジメントの詳細はこちら
    一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 https://www.angermanagement.co.jp/
    西村さんのアンガーマネジメント講座、詳細はこちら https://ameblo.jp/nishimura-ayako