一日100食ランチのみでお仕事終了! そんな新しいビジネスで世の中に衝撃を与えた中村朱美さん。
シングルマザー、高齢者、障害がある方、そして年齢層も様々にここでは多くの人が幸せに仕事をしています。ぜひおしゃべりしたい!と今回は草花木果の社長を務める乗松も京都に出かけました。
<佰食屋とは>1日100食限定をコンセプトに、 ステーキ丼からスタートした美味しいものを手軽な値段で食べられるお店。ランチ営業のみ、完売次第営業終了という、飲食店の常識を覆すビジネスモデルを構築し、飲食店におけるワークライフバランス(18時完全退勤・残業ゼロ)を実現。働きやすい環境を整えることで、現在シングルマザー・障害者・介護中の方・高齢者(70歳以上3名)も活躍中。
経営者ですが、業績至上主義に反対なんです。
乗松(草花木果 社長):すごくお会いしたかったので、今日は機会をいただき嬉しいです。早速カレーも美味しくいただきました(この日はカレーの専門店である「佰食屋1/2」にておしゃべりしました)。
中村さんの会社では、皆さんがとてもイキイキと過ごしていらっしゃいます。経営者としてどんなことに気をつけていらっしゃいますか?
中村朱美(以降敬称略):初めまして。わざわざいらしていただきありがとうございます。カレーも召し上がっていただき、嬉しいです。経営者の方なので、経営的な面からお話をさせていただくと、私は、前年対比で増収増益というような数字を全く追いかけていないんです。そもそも社員のモチベーションは「前の年より売り上げと利益を増やそう」ということぐらいでは本当の意味では動かない(笑)。
その数字目標から、無理な営業や過酷な勤務、さらに粉飾決算などが起こってしまうとも言えるのではないでしょうか。ある種の強迫観念に繋がるような業績至上主義に私は反対しています。
目指しているのは「減収増益」ですね。これからは人口も減っていくし、時代はどんどん動いていくので1つの形でずっと大きくし続けるのは不可能なのではないかな、と。今をキープしながら、新しいことでどんどん大きくなろうとすればどこかで無理が出てきます。だから私は、人は増やさずに、大事な仲間と一緒に今いるメンバーでできる範囲を一緒に考えるようにしています。
乗松:なるほど、それは新鮮な考え方です。企業はどうしても規模拡大を追いかけがちです。
大切なのは、お客さまとの濃い関係。
中村:分かります。でも、大きさを求めずに、コアなファンになってくれるお客さまと一緒に濃い関係を作っていければ、必ずブランドは残っていくと思っているんです。実際に「一日100食しか売らないと、社員の給料はずっと上がらないの?」という質問を受けるんですが、そんなことはない(笑)。
おそらく世間の平均以上に給料はアップしていますし、ボーナスも年3回支給できています。もちろん、そのために緩やかにはビジネスを発展させていますが、急激に店舗数を増やしたいとか、大きくするということはありません。
乗松:草花木果も、リピーターの方々に支えていただいているブランドです。中村さんに学んで、ずっと草花木果を支えてくださっているファンの方々に対して私たちができることをもっと考えたいと思っています。
中村:「どうやってあの人を笑顔にできるかな」「こんなものがあったら、いつも来てくださるあのお客さまは喜んでくださるかな」と具体的に考えて仕事をすることができれば、自然にいい関係性が生まれますよね。その方が社員一人ひとりも楽しいはずです。
乗松:本当にその通りです。私たちも、これまで以上に草花木果が出来ることを考えたいです。お話していると、中村さんは目がキラキラと輝いていて、とっても楽しそうですね。ビジネスで悩むこともあるんでしょうか?
自分の意志を持っている人が、美しい。
中村:もちろん!創業して5年くらいは悩んでばかりでした。段々方向性ややり方が固まってきたんです。でも、大変な時もずっと楽しかったです。成功したわけではなくて、諦めずに、大変な時も考え続けただけ。趣味は仕事と言えるくらい、ずっと仕事のことばかり熱中してしまいますね。
乗松:自分の意志で決めたことだから、楽しく過ごしてこられたのでしょうか?
中村:そうですね。私は自分の意志を持っている人が美しいと思うし、そうなりたいと思っています。働く時間にしても、生活スタイルにしても「こうしないとダメ」「こういう条件」と決められてしまうと不満が残ってイライラします。そうしたら、美しくなくなってしまう。
たとえ忙しくて睡眠時間が1時間とか2時間であっても、「自分が決めたからイイ!」と笑っている人は美しいと思います。自分が決めて、自分がやりたいことを自分の意志でやる。そんな風に暮らしていきたいです。
乗松:いいですね。私もそうありたい! そのために必要なのはどんなことでしょうか?
中村:鈍感力が大事なのではないでしょうか。たとえば、やりたいことがあってもなかなか始められない人は「家族が反対する」「貯金がもう少し貯まったら」「世間体が気になる」「許してもらえなさそう」など、やらない理由ばかりを思いついてしまう。それは仕事でもプライベートでも同じです。鈍感に、楽天的に、が幸せに生きる秘訣なのではないでしょうか?
「掃除をするときは眼鏡をはずす」くらいの気持ちです。そんなに細かく考えなくても、人生は進んでいくものです。 私自身、これからもやりたいことにどんどん挑戦していくつもりですし、それが食の分野とは限りません。未経験でも、やりたいと思ったらやっちゃう(笑)。長い人生のプランは持っていますが、たとえばビジネスの時に中長期計画とかは立てません。数か月先までだけを考えて、日々を一歩一歩進んでいるだけですね。
乗松:自分の意志で、一歩一歩、なんですね。最後に、中村さんの「欲」は何か、ぜひ教えてください。
楽しく生きるために、動いていきたい。
中村:そうですね、決してお金がたくさん欲しいわけでもない(笑)。楽しく生きるということでしょうか。これって実はとても難しいミッションです。仕事がなくなったら楽しくなくなるし、その仕事もしんどすぎたら楽しくない。ハッピーマインドのまま仕事を続けて楽しく生きていきたい。
最近「売り上げを、減らそう」(ライツ社)という著書も書かせていただいて、これまでの活動はいったん形にまとめたんです。一応、今のところ40才までにこの仕事を引退しようと思っています。誰か従業員でこの仕事を継いでくれる人がいたらいいな。それで数年休憩して、次の何かを始めたい。何かを一度すべて捨てないと、次のことは始まらないんです。これからも鈍感力とともに、執着や恐怖心を持たずにどんどん挑戦を続けて、ハッピーになっていきたいです。