ゆずの収穫レポート番外編。
お腹も心も満たされる「皿鉢(さわち)料理」。

2019.02.22 更新

    朝からゆずの収穫を手伝わせていただいた後は、待ちに待ったランチタイム…!今にも暴れ出しそうな腹の虫と戦いながら、お食事処へと向かいます。なんでも、土佐の郷土料理をごちそうしてくれるのだとか。カツオ?ゆず?頭の中で妄想が膨らむ中、いよいよ到着しました。

    総勢20名ほどで机を囲み、まるで親戚の集まりのようにわいわいと賑やかなランチタイム。「なにが出てくるんだろう」とはやる胸のうちを抑えて、みんなとおしゃべりをしながらその時を待ちます。「いっぱい食べてね〜」という声と同時に目の前に表れたのは、豪華なお弁当…そして、大人の顔がすっぽりと隠れてしまうほどのお皿の上に、所狭しと何種類もの料理が盛り付けられた、これぞ“大皿料理”。「これが高知の郷土料理の皿鉢(さわち)料理なんよ」と、教えてくれました。

    山と海に恵まれた、南国土佐で育まれた「皿鉢料理」。

    料理をてんこ盛りにした豪快なひと皿は、まさに“料理の芸術”。さばの姿寿司を中心に、揚げ物や煮物、そしてデザートがぐるりと取り囲んでいます。聞いてみると、厳格なルールなどはなく、寿司、揚げ物、煮物、焼き物、フルーツ、ゼリー、ようかんなどを1皿に盛りつける郷土料理なのだそう。まさに、ざっくばらんで飾らない、高知県の県民性が表れたような料理です

    みんなでわいわいとひとつのお皿を囲む、おもてなし料理。

    今回、皿鉢料理を作ってくれたのは、地元のお食事処「味工房 じねん」のみなさん。高知県安芸郡安田町の人々は、ランチを食べに行くのはもちろんのこと、特別な日のお弁当などを注文することが多い、安田町の“おふくろの味”的スポットです。

    基本的に皿鉢料理がふるまわれるのは、宴会や法事などのもてなしの際。「ひとつの大皿に料理をいっぱいのせるけん、台所と何度も往復する手間がはぶけて、女性も一緒になってお酒を飲めるんよ。デザートまでのせれば完璧やろ?」と教えてくれました。なるほど、料理はもちろんのこと、みんなで一緒にお酒を酌み交わすことができる…二重のおもてなし精神から生まれた郷土料理なのですね。

    ゆず玉を絞った「柚子酢(ゆのす)」が大活躍。

    さらに、皿鉢料理のおもしろいところは、それぞれの「家庭の味」がプラスされているところ。子供のころから慣れ親しんでいる郷土料理だからこそ、自然と子供へ孫へ…と何世代も受け継がれているのです。「じねんでは柚子酢をよう使いよるよ」と教えてくれました。柚子酢とは、ゆず玉を絞った果汁のことで、高知では古くから酢の代わりとして使われてきました。今でも、食卓には必ず並んでいるほど、高知では定番の調味料なのです。調理している風景をよくよく見ると、みょうがの柚子酢づけや、すし酢代わりに柚子酢を使うなど、さまざまな料理で大活躍していました。しかも、柚子酢は新しければいいというわけではなく、月日とともに味がまろやかに変化するため、料理によって使い分けているのだとか。お…奥が深い!

    みんなを笑顔にする、皿鉢料理のパワー 。

    食卓に皿鉢料理が運ばれてくると、一同「何これ〜!」と目を丸くして驚くだけでなく、「ゆずの味がしたよ!」「さばの姿寿司、いっぱい食べちゃお!」「羊羹まで入ってる〜」など、たくさんのおしゃべりが生まれていました。その光景を見て、「これを食べて、全員が笑顔にならないわけがないな…」と心の中で思うのです。食べて、しゃべって、パワーをチャージ。午後からの作業は、午前よりもさらに“いい顔”をしていたことは、いうまでもありません。

    今回おしゃべりした方
    nouserさん