アンガーマネジメントファシリテーター西村綾子さんに伺う「怒りのマネジメント」第2回。今回は、特に怒りと美しさはどう関わっているのか、おしゃべりしました。
人との関わりを尊重することが美しさにつながります。
草花木果:怒りと美しさってどんな関係があるのでしょうか?怒っている時の自分は、あんまり美しくないな…と思うこともあるんですが、アンガーマネジメントは、美しくいるためにも必要なんでしょうか。
西村さん(以降敬称略):怒りをマネジメントすること、つまり、自分の感情に責任を持てるようになることは、美しくあるためにも必要だと思います。例えば、本当は怒っているのに顔は笑顔、のように、自分の心と行動がズレていたら、その笑顔は美しいと言えるでしょうか?
もちろん、ただ怒らなければいいということではありません。これを怒らなかったら後から後悔するな、と思うなら怒ればいいのです。そして、怒ったら後から後悔するな、と思えば怒らない。こんな風に、自分や周りの怒りに振り回されず、自分でコントロールできることは、心身の美しさや、人との関わりを尊重することにもつながると考えます。
草花木果:人との関わりを尊重できるようになるためには、どうしたらいいでしょうか?
西村:覚えていただきたいのは、怒りは単体で存在していないということ。氷山を想像してください。海面上に見えている氷山は、実は全体の1割くらいで、下部にはその9割が沈んでいると言われています。この、上に見えている部分が怒り。これを第二次感情と呼んでいます。その下に隠れている部分に、一般的に言うマイナスな感情、第一次感情が存在する、という構造です。第一次感情である、悲しい、苦しいなどの感情を伝えたいのに、うまく伝わらなくて怒りという感情で表現してしまうのです。本当は「怒っているんだ」ということを一番伝えたいわけではないですよね。こう考えてみれば、自分の怒りや、怒っている人に対しての見方も変わるのではないでしょうか。
例えば、門限を破った子供に対して親は、「何やってたのっ!!」と、怒っていることだけを伝えてしまいがちです。でも本当は、心配だから怒っている、のですよね。「門限を守って欲しい。とても心配したのよ」とリクエストと第一次感情を伝えると、次からどうして欲しいのか、何に対して怒っているのかが、相手に伝わりやすくなります。自分が怒る時にも、相手が怒っている時にも、「この怒りの第一次感情はなんだろう」と意識してみてください。
「この人は怒っている」から、「この人は何に怒っているんだろう」に見方が変えられると、自分や相手の気持ちを尊重しやすくなりますよ。
「休ませる」「ととのえる」のは、アンガーマネジメントにも大切。
草花木果:私たちは、肌を「休ませる」「ととのえる」の2つのアプローチから、健やかで美しい肌を目指すサポートしています。アンガーマネジメントの視点から「休ませる」「ととのえる」ことはどのように思われますか?
西村:それは、とっても大切だと思います。良い睡眠がとれた日と寝不足の日だと、嫌なことに遭遇した時の腹の立ち方が違うことってありませんか?
心も体も、休める時にちゃんと休ませる。ととのえる時にちゃんと、ととのえる。そうすることで、無駄なイライラを感じにくくなると思います。
自分が何のストレスもない状態で、誰かが不注意でぶつかってきても「危ないわねぇ」くらいで終わりますが、とても急いでいたり、直前に嫌なことがあって余裕がないと、「むかつくーっ」と、怒りが大きくなってしまうことも。出来事は同じですが、その時の自分の状態で、感じ方が変わってしまうこともあるのです。
怒る、怒らないを決めているのは あなた自身。
西村:私たちは、怒りの原因は自分の外側(誰か・出来事)にあると思いがちです。「あの人が私を怒らせる」というように。でも、そうではないんです。何か出来事があって、それを自分がどう意味づけするのかによって、「怒るか、怒らないのかを、自分で決めている」のです。
例えば、「すれ違った同僚に挨拶した。同僚は挨拶を返さなかった」という出来事を、挨拶をされたら返すべきだ、と意味づければ、「なんで返さない」「無視した」と怒りが湧きます。聞こえなかったのかな、と、意味づければ、怒りは生まれませんよね。
「怒るか怒らないかは、自分が選んでいる」という仕組みだからこそ、怒りの感情は自分でコントロールできる、ということなのです。 アンガーマネジメントは、心理教育、心理トレーニングです。怒りの構造や仕組みを学び、「イラっ」とするたびに対処の練習を繰り返すことで、怒りとの付き合い方が誰でも上手になりますよ。
草花木果:ぜひ、私たちももっと深く勉強したいです!
西村:自分の怒りの感情と上手に付き合えるようになれば、自分自身の行動や発言にも、責任を持てるようになっていきます。すべての感情を選択しているのは自分自身であることを理解し、怒りの感情で後悔をしなくなることで、心身ともに美しく、ととのえていくことができるのではないでしょうか。