女性脳で新しい活動を仕掛ける
西村やす子さん。憧れです。

2019.01.10 更新

    日本の植物や自然とともに歩み続ける私たち草花木果が、この方から学ぶべきことがたくさんありそう。
    そんな予感から、司法書士とオリーブ事業という二足のわらじを履く西村やす子さんにお会いするために静岡県の日本平に出かけました。
    つい4年前は、まだ苗木だったオリーブから始まった西村さんの歩みやそこに込めた思いとは。
    富士山と駿河湾の両方を臨むステキなオリーブ畑の中で、おしゃべりスタートです。

    お伺いした時期は、まさにオリーブの実の収穫の真っ最中。
    2014年に植えた苗が順調に育ち、4年でこれほどの農園が出来上がったとか。新しい農業ビジネスモデルで地域活性化を叶えるアクションを続ける西村さんですが、これまで、順風満帆だったわけでもないようで・・・。

    静岡県でオリーブ、と聞いて驚かれませんでしたか?

    草花木果:山も海も一望できる素敵な場所ですね!オリーブの実が実際になっているところを初めて見ました。

    西村さん(以降敬称略):4年前は、このすべてが小さな苗木でした。ここでたくさんの品種のオリーブの樹を育てています。あとでぜひ収穫したばかりのオリーブの実を搾ったオリーブオイルも試してみてくださいね。

    草花木果:そもそも静岡県でオリーブを作っているということも知らなかったんです。

    西村さん:そうですよね。静岡県を活性化したいという想いもあり私がはじめた事業ですが、当初は「静岡でオリーブが育つわけがない」と反対の声しかありませんでした。もともと食が大好きで、司法書士の仕事の傍ら野菜ソムリエやオリーブオイルソムリエなどの資格をとっていたのですが、ある時に本物のオリーブオイルの味を知る機会があってびっくりしたんです。それまで私が知っていたオリーブオイルとはまったく違っていました。
    その頃ちょうど、司法書士としての仕事の中で後継ぎがいなくて困っている農家さんたちから農地についての相談なども受けていたこともあり、静岡で新しい経済作物を作って農業の形を変えたら面白いのではないか、と思いつきました。スペインやイタリアに視察に行ったり、世界レベルの栽培方法を学ぶうち、海外の高い技術を導入できれば静岡でも育てられるに違いないと確信したんです。

    草花木果:そう言われてみれば、この畑、土が変わっていますよね。というか、よく見る畑の土や泥の印象と違います! 砂利っぽくて、靴も汚れません…。

    西村さん:荒地のようでしょ。でもヨーロッパのオリーブ畑は、だいたいこんなイメージだったんです。

    草花木果:ただ、いきなり農業といってもスタートするための資本も必要ですし、大変だったのではありませんか?

    始めはイメージが伝わらなくて…。それで、オリーブが育つ前に、オリーブ製品を販売するショップを作りました。

    西村さん:壮大な事業計画を思いついた!と私の中では完璧なイメージが出来上がっていましたが、誰に話してもなかなか理解してもらえなくて。地域活性になる、静岡をブランド化できる、と熱く語っても「え〜!?」という反応でした。それでオリーブが育つ前に、まず静岡の駅の近くに店舗を作ったんです。私の本気を皆さんに伝えるための仕掛けです。農業の一番の課題は、どんなにいいものを作っても、売るところがない、自分で値段を決められないということだと考えていたので、私がその場所をまず立ち上げました。出口を作ることからのスタートというわけです。

    実は、オリーブオイルは日本では一般家庭使われ始めてまだ30年くらいしか経っていないんです。ヨーロッパはすでに8000年くらいの歴史があるのに比べ、たったの30年。つまり、多くの人は本場の味も知らないですし、美容と健康にどんな効果があるのかもそれほど詳しくありません。だからこそ、静岡産のオリーブが収穫できる前から、先に世界中の本物のオリーブオイルを皆さんに食べていただいて、その価値を感じていただくことから始めました。

    草花木果:まだオリーブがどれほど育つか、収穫できるかわからない時から、静岡の一等地にお店を構える度胸がすごい!

    西村さん:いえ、私だけでなく、女性には、産んで、何年もコツコツ育てていく力があると思うんです。なにか問題があっても、そこを新しい発想や工夫で乗り越えていける。
    ただ、お店でどんなにオリーブの良さを伝えていても、静岡産のオリーブオイルが250mLで1万円になってしまったら誰も買えません。でも、国産のオリーブオイルはどうしてもそのくらいの価値になってしまいます。だったら、収穫の時期だけ、絞りたてのものを30mLなどの小さいサイズで1000円とか2000円で売っていたらどうでしょうか。今日いらしていただいた富士山や駿河湾の景色まで楽しめる農園で一緒に収穫を体験していただき、そこで搾りたてのオリーブオイルを使ったピザやカルパッショなどのランチを味わっていただいたとしたら、その静岡産のオリーブオイルが欲しくなりませか? そのような消費者目線を農業の世界に持ち込むことで、みんながハッピーになれるのではないかと思っています。

    草花木果:本当に見事な景色で、あの農園の場所にカフェやギャラリー、ホテルなどがあったら絶対に遊びに行きたい!と妄想しました(笑)。静岡の自然の中にあるテーマパークのようですね。

    女性には新しいものを生み出し、育てていくアイデアとパワーがあると思います。

    西村さん:静岡は東京と名古屋に挟まれて、いつも通過されてしまっています。でも海も山もあって食べ物は美味しいし、気候も温暖でとてもいい場所です。私の場合はたまたまオリーブが入り口でしたが、日本の農業をおもしろくしながら、地元に人を呼び込んで活性化できたら、そんなに嬉しいことはないと思っています。
    私は、今の延長に未来はないと考えています。それまでの考え方でどんなに頑張っても報われない。0から新しい価値を生み出さないといけない時代になったと感じます。最近、オリーブの事業がうまく行き始めたのでいろいろなお話もいただきますが、私としては、静岡の中にいろいろな0から1を生み出して、それがどんどん広がっていく、ということを大切にしたい。物を作るのではなくて、価値を作るという発想で、これからもどんどん挑戦していきたいと思います。

    次回は、毎日忙しい西村さんの美と健康のコツを伺いました。オリーブ以外にも、学ぶことばかりです。

    西村さんのアイデアから生まれた静岡名産はこれ。

    1.静岡産オリーブオイル
    そのまま飲んでも美味しい、驚きの味。今年の秋に100%手摘みで収穫したオリーブからできました。

    2.静岡産わさびとしらすの食べるオリーブオイル
    白米、目玉焼き、温野菜‥。いろいろな食材と相性抜群。静岡生まれの食材のハーモニーは、まさに幸せを運ぶ味。

    3.HARUMIアロマキャンドル
    西村さんのアイデアは、オリーブだけにとどまりません。静岡産のみかんの果皮を使ったアロマキャンドルは、こころときめく香り。





    西村 やす子
    今回おしゃべりした方
    西村 やす子さん

    株式会社クレアファーム代表取締役。1997年司法書士事務所を開業、 その後2008年に法人化し司法書士法人つかさ設立。代表社員を務め、法人・個人の法務コンサルティングや農業経営支援を行う。2014年オリーブオイル専門店「CREA TABLE」出店、農業参入。2015年に株式会社クレアファームを設立。 元気な“まち”をつくる、“農家”を盛りあげる、地域発“美味しいコラボ”をキーワードに、精力的に活動中。